「古着屋って、ぶっちゃけどれくらい稼げるん?」
これ、私が年間50社以上の古着ビジネスの立ち上げを支援している中で、一番よく聞かれる質問です。SNSでは月収100万円を超える華やかな成功談が流れてくる一方で、「全然儲からへんかった」と1年も持たずに閉店していく人もたくさん見てきました。
はじめまして、佐藤健一と申します。大阪を拠点に、古着ビジネス専門のコンサルティング会社「ヴィンテージ・サクセス」を経営しています。自分自身も2008年に古着セレクトショップ「RETRO STYLE」を立ち上げて3店舗まで展開し、年商2億円まで成長させた経験があります。その後2015年に事業売却し、現在はこれまでに500名以上の古着ビジネス起業家を指導してきました。
正直に言うと、古着屋の年収には「夢」もあれば「現実」もあります。今回はきれいごと抜きで、月商別のリアルな手取り額と、それぞれの生活レベルがどんなものなのかを、私の経験と指導実績から包み隠さずお伝えします。これから古着屋を始めたい方も、すでに経営している方も、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
古着屋の年収、ぶっちゃけどれくらい?業界のリアルな相場感
まず大前提として知っておいてほしいのですが、古着屋オーナーの年収に関する公的な統計データは存在しません。国税庁の「民間給与実態統計調査」のような業種別の平均年収データに「古着屋」というカテゴリはないんです。だからこそ、ネット上には根拠の曖昧な数字が飛び交っていて、正直あてにならない情報も多いです。
ここでお伝えするのは、私自身が古着屋を経営した実体験と、コンサルタントとして500名以上の古着ビジネス起業家を指導してきた中で見てきた「リアルな数字」です。
結論から言います。古着屋オーナーの年収は、ざっくり以下のレンジに分かれます。
| 経営規模 | 年収の目安 | 該当する人の割合(体感) |
|---|---|---|
| 副業・小規模(ネット販売中心) | 100万〜250万円 | 約40% |
| 一人店舗・小規模実店舗 | 250万〜400万円 | 約30% |
| 安定経営(実店舗+EC) | 400万〜700万円 | 約20% |
| 複数店舗・大規模展開 | 700万〜1,500万円以上 | 約10% |
ここで言う「年収」とは、売上から経費をすべて差し引いた後の「事業所得」のことです。さらにここから税金や社会保険料が引かれるので、実際の手取りはもっと少なくなります。この点は後で詳しく説明しますね。
私自身の話をすると、2008年に最初の店舗を大阪の堀江エリアにオープンした初年度は、年収にして180万円ほどでした。家賃と仕入れに追われて、正直「サラリーマン時代の方がよっぽど稼げてたやんか」と何度も思いました。でも3年目に年収が500万円を超え、5年目には1,000万円の大台に乗りました。古着ビジネスは、正しいやり方で続けていけば、ちゃんと伸びていく商売です。
月商別に見る古着屋オーナーの手取り額シミュレーション
ここからが本題です。月商別に、経費を引いた後の利益と、さらに税金・社会保険料を引いた後の「リアルな手取り」をシミュレーションしていきます。なお、ここでは個人事業主として青色申告(65万円控除)を行っている前提で計算しています。
月商30万円台:副業・週末起業レベル
まずは月商30万円のケースです。古着転売を副業で始めた方や、ネットショップをメインに運営している方が多いゾーンですね。
私が指導した方の中にも、会社員をしながらメルカリやBASEで月商30万円を達成した方はたくさんいます。1着あたり平均3,000円で販売して、月に100着ほど売るイメージです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月商(売上) | 30万円 |
| 仕入原価(原価率40%) | 12万円 |
| 送料・梱包材 | 3万円 |
| 販売手数料(10%) | 3万円 |
| 通信費・雑費 | 1万円 |
| 月間利益 | 約11万円 |
| 年間利益 | 約132万円 |
| 税金・社会保険料 | 約20万円 |
| 年間手取り | 約112万円 |
生活レベルとしては、これ一本で食べていくのは正直厳しいです。副業として月に10万円前後のお小遣いが入ってくるイメージですね。ただ、ここからスタートして本業に移行していく方も多いので、最初のステップとしては十分な数字です。
月商50万〜80万円:一人店舗でギリギリ生活できるライン
次に月商50万〜80万円のゾーンです。小さな実店舗を構えている方や、ネット販売で本腰を入れ始めた方が該当します。ここでは月商70万円で計算してみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月商(売上) | 70万円 |
| 仕入原価(原価率35%) | 24.5万円 |
| 家賃(10坪程度) | 10万円 |
| 光熱費・通信費 | 2万円 |
| 送料・梱包材 | 3万円 |
| 販売手数料(EC分) | 2万円 |
| 広告宣伝費 | 2万円 |
| 雑費・消耗品 | 1.5万円 |
| 月間利益 | 約25万円 |
| 年間利益 | 約300万円 |
| 税金・社会保険料 | 約55万円 |
| 年間手取り | 約245万円 |
月の手取りは約20万円です。一人暮らしならなんとかやっていけますが、家族を養うには厳しい水準ですね。私の経験では、このゾーンにいる方は「もう少しだけ頑張れば楽になるのに」という状態で、ここが踏ん張りどころです。
実は私も2009年、リーマンショックの影響で売上が半減した時にこのゾーンまで落ちたことがあります。2店舗を閉店して、1店舗で必死にやりくりしていた時期でした。あの時は本当に辛かったですが、その経験があったからこそ「固定費を下げることの重要性」を身をもって学びました。
月商100万〜150万円:安定経営の入口
月商100万〜150万円になると、ようやく「ちゃんと食べていける」レベルに到達します。実店舗とECを併用し、リピーターもついてきた段階です。ここでは月商120万円で計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月商(売上) | 120万円 |
| 仕入原価(原価率35%) | 42万円 |
| 家賃 | 12万円 |
| 人件費(アルバイト1名) | 10万円 |
| 光熱費・通信費 | 3万円 |
| 送料・梱包材 | 4万円 |
| 販売手数料(EC分) | 3万円 |
| 広告宣伝費 | 3万円 |
| 雑費・消耗品・交通費 | 3万円 |
| 月間利益 | 約40万円 |
| 年間利益 | 約480万円 |
| 税金・社会保険料 | 約105万円 |
| 年間手取り | 約375万円 |
月の手取りは約31万円。家族がいても、贅沢をしなければ安定した生活ができる水準です。日本のサラリーマンの平均年収が約460万円(国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査」より)ですので、手取りベースで比べると会社員の平均にはまだ届きません。ただし、自分の好きなことで独立して、時間の自由もある程度きく。そこに価値を感じる方には十分な数字です。
私が指導した起業家の中で、3年目にこのゾーンに到達した方は約6割です。逆に言えば、4割の方はここまで到達する前に別の道を選んでいます。コツコツ続けることが、本当に大事なんです。
月商200万円以上:複数店舗・EC併用で本格経営
月商200万円を超えてくると、もはや「お店屋さん」ではなく「経営者」としてのステージに入ります。複数店舗の展開やEC販売の本格化、場合によってはスタッフを数名雇用している規模です。月商250万円で計算してみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月商(売上) | 250万円 |
| 仕入原価(原価率30%) | 75万円 |
| 家賃(2店舗分) | 25万円 |
| 人件費(スタッフ2〜3名) | 40万円 |
| 光熱費・通信費 | 5万円 |
| 送料・梱包材 | 6万円 |
| 販売手数料(EC分) | 5万円 |
| 広告宣伝費 | 8万円 |
| その他経費(会計・交通費等) | 6万円 |
| 月間利益 | 約80万円 |
| 年間利益 | 約960万円 |
| 税金・社会保険料(法人化想定) | 約260万円 |
| 年間手取り | 約700万円 |
年間手取り700万円ともなると、住宅ローンも組めますし、年に1〜2回の家族旅行も問題なく行けます。ここまで来ると古着ビジネスの面白さがさらに広がって、海外仕入れのルート開拓や自社ブランドの立ち上げなど、次のステージが見えてきます。
ちなみに私が「RETRO STYLE」を経営していた時は、3店舗合計で月商600万〜800万円ほどありました。スタッフも7名ほど抱えていましたが、オーナーとしての年収は1,200万〜1,500万円程度。ここまで来るのに7年かかりましたが、不可能な数字ではありません。
古着屋の経費、何にどれだけかかる?リアルな内訳を公開
年収を語る上で避けて通れないのが「経費」の話です。売上がいくらあっても、経費の管理ができていなければ手元にお金は残りません。マネーフォワード クラウド会社設立の解説にもあるとおり、古着屋経営では売上規模や客単価だけでなく、経費構造の設計が年収を大きく左右します。
固定費の内訳
固定費は売上の増減に関わらず毎月必ず出ていくお金です。古着屋の場合、主な固定費は以下のとおりです。
| 固定費項目 | 月額の目安(小規模店舗) |
|---|---|
| 家賃 | 8万〜20万円 |
| 光熱費 | 1万〜2万円 |
| 通信費(Wi-Fi・電話) | 0.5万〜1万円 |
| 保険料 | 0.5万〜1万円 |
| POSレジ・システム利用料 | 0.5万〜1万円 |
| 会計ソフト・税理士費用 | 0.5万〜3万円 |
家賃は立地によって大きく変わります。東京の下北沢や高円寺のような古着激戦区だと、10坪でも月15万〜25万円はかかることがあります。一方、地方都市なら同じ広さで5万〜10万円で見つかることも珍しくありません。
私がいつもアドバイスしているのは、「固定費は月商の30%以内に抑えること」です。これを超えると、ちょっと売上が落ちただけで一気に赤字に転落します。
変動費の内訳
変動費は売上に応じて増減する経費です。
| 変動費項目 | 売上に対する割合の目安 |
|---|---|
| 仕入原価 | 30%〜45% |
| 送料・梱包材 | 3%〜5% |
| EC販売手数料 | 5%〜10% |
| 決済手数料 | 3%前後 |
| 広告宣伝費 | 3%〜5% |
仕入原価をどこまで下げられるかが、古着屋の利益を決める最大のポイントです。初心者の方は原価率が45%以上になってしまうことも珍しくありませんが、経験を積んで仕入れルートが安定してくると、30%台前半まで下げることも可能です。
見落としがちな「隠れ経費」
実はこの「隠れ経費」が、初めて古着屋を経営する方を苦しめるんです。具体的には次のようなものがあります。
・仕入れの交通費やガソリン代(月に何度もリサイクルショップを回る方は要注意)
・古物台帳の管理費用(古物商許可を取得した後も継続的に記録が必要)
・撮影機材の更新費用(スマホだけでは限界がある)
・在庫の保管スペース費用(自宅以外に倉庫を借りる場合)
・確定申告の準備にかかる時間的コスト
特に「自分の時間」をコストとして計算していない方が多いです。仕入れに週10時間、撮影・出品に週15時間、梱包・発送に週5時間。合計で週30時間以上を費やしているのに、時給換算すると500円を切っているなんてことも珍しくありません。
古着屋オーナーの手取りを左右する3つの要因
同じ月商でも、手取り額に大きな差が出る原因があります。私がこれまで500名以上を指導してきた中で見えてきた、手取りを左右する3つの要因を紹介します。
仕入れ力(原価率のコントロール)
原価率が5%変わるだけで、年間の手取りが数十万円単位で変わってきます。たとえば月商100万円の場合、原価率40%なら粗利は60万円ですが、原価率35%なら粗利は65万円。月5万円の差は、年間で60万円にもなります。
仕入れ力を高めるためには、複数の仕入れルートを持つことが不可欠です。国内のリサイクルショップだけでなく、古着卸業者との取引、個人からの買取、そして海外仕入れなど、ルートを分散させることでリスクヘッジにもなります。
私が2012年に海外仕入れで300万円の損失を出した話は以前もお伝えしましたが、あの失敗があったからこそ「信頼できる仕入れ先を複数持つことの大切さ」を痛感しました。
客単価と回転率のバランス
古着屋の経営で意外と見落とされがちなのが、「客単価」と「回転率」のバランスです。
高単価なヴィンテージ古着を扱えば1着あたりの利益は大きくなりますが、売れるまでに時間がかかります。逆に、低単価のレギュラー古着は回転率は高いけれど、1着あたりの利益が薄い。仕入れにコストをかけすぎて高額商品ばかりを並べると回転率が落ちて利益を生み出しにくくなります。
私のおすすめは、全体の7割をレギュラー古着(1,000円〜5,000円)、3割をブランド古着やヴィンテージ(5,000円〜30,000円)で構成すること。この比率が、回転率と利益率の両方を確保できるバランスです。
オンライン販売の活用度
2023年の国内ファッションリユース市場は1兆1,500億円を超え、前年比113.9%という驚異的な伸びを見せています(矢野経済研究所の調査より)。この成長を牽引しているのがオンライン販売です。
実店舗だけで運営している古着屋と、実店舗+ECを併用している古着屋では、同じ規模でも手取りに月10万〜20万円の差が出ることがあります。EC販売には手数料がかかりますが、商圏が全国に広がるメリットは計り知れません。
メルカリ、BASE、Shopify、Yahoo!フリマなど、今はプラットフォームの選択肢も豊富です。私が指導している方には、最低でも2つ以上のプラットフォームを併用することをすすめています。1つに依存すると、そのプラットフォームのルール変更やアルゴリズム変動の影響をもろに受けてしまうからです。
年収を上げたい古着屋オーナーが今すぐやるべきこと
最後に、今の年収に満足していない古着屋オーナーに向けて、私が実際にコンサルの現場でアドバイスしていることをお伝えします。
まず一つ目は「EC販売の強化」です。実店舗のみで運営している方は、今すぐオンライン販売を始めてください。初期費用はほぼゼロで始められるプラットフォームがたくさんあります。私の指導先でも、EC併用に切り替えただけで月商が1.5倍になったケースは珍しくありません。
二つ目は「仕入れルートの多角化」です。いつも同じ場所で仕入れていると、商品のバリエーションが固定化してしまいます。古着卸業者との新規取引や、海外仕入れの検討、あるいは個人からの買取を強化するなど、仕入れの幅を広げることが売上アップに直結します。
三つ目は「SNSを活用した集客」です。InstagramやTikTokで入荷情報や着こなし提案を発信することで、店舗に来たことがない人にもアプローチできます。実際、私が指導した20代のオーナーの中には、Instagramだけでフォロワー1万人を超え、新規顧客の7割がSNS経由という方もいます。
そして四つ目、これが一番大事なんですが、「数字を毎日見る習慣をつける」ことです。月商、原価率、在庫回転率、客単価。この4つの数字を毎日確認するだけで、経営判断のスピードと精度が格段に上がります。なんとなく感覚で経営している方と、数字を見ながら経営している方では、3年後に大きな差がついています。
まとめ
古着屋の年収は、副業レベルの年間100万円台から、複数店舗展開で年間700万円以上の手取りまで、経営規模と取り組み方によって大きな幅があります。
改めて月商別の手取り目安を振り返ると、月商30万円で年間手取り約112万円、月商70万円で約245万円、月商120万円で約375万円、月商250万円で約700万円。この数字を見て「思ったより少ないな」と感じた方もいるかもしれません。
正直に言うと、古着屋は楽して稼げる商売ではありません。でも、仕入れ力を磨き、EC販売を活用し、数字と向き合いながらコツコツ続けていけば、しっかり食べていける商売であることも事実です。
私自身も最初の年は年収180万円からスタートして、何度も失敗して、それでも諦めずに続けてきました。リサイクル通信のリユース市場データによると、日本のリユース市場は2023年に3兆1,227億円を超え、14年連続で拡大を続けています。古着ビジネスの追い風は確実に吹いています。
今の自分の数字がどのゾーンにあるのかを把握して、次のステージに進むために何が必要なのかを考えてみてください。この記事が、皆さんの古着ビジネスの一歩を後押しできれば嬉しいです。一緒に頑張りましょう!