「アパレルで独立したい」「自分のブランドを作りたい」。
そういう相談、もう何百回と受けてきました。
はじめまして、佐藤健一です。
大阪で古着ビジネスのコンサルティング会社をやっています。
自分自身も古着セレクトショップを3店舗まで広げて年商2億円までいきましたが、その途中でリーマンショックで2店舗潰して、海外仕入れで300万円の損失を出して、スタッフが一斉に辞めて一人で3店舗回したこともあります。
正直、何回「もうあかんわ」と思ったか分かりません。
そんな経験があるからこそ、今は年間50社以上のアパレル起業を支援させてもらってます。
これまで500人以上の起業家を見てきて、はっきり分かったことがあります。
潰れる店には、共通のパターンがある。
逆に言えば、このパターンさえ避ければ生き残れる確率はグッと上がります。
実際、わいが指導した起業家の3年後生存率は85%。業界平均の約2倍です。
この記事では、わいが実際に見てきた「潰れる店」の共通点を5つ、包み隠さずお伝えします。
これからアパレルで起業しようとしている人、すでに始めたけど苦しんでいる人に、ぜひ読んでほしい内容です。
目次
そもそもアパレル起業ってどれくらい潰れるん?
まず最初に、アパレル業界の現実をお伝えしておきます。
「自分は大丈夫」と思っている人ほど、この数字をしっかり見てほしい。
統計データが示すリアルな数字
中小企業庁の「2025年版 中小企業白書」によると、小売業全体の開業5年後の事業継続率は約72.5%です。
10社が起業したら、5年後には3社が消えている計算です。
しかもこれは小売業全体の数字で、アパレルに限ればもっと厳しいのが実情です。
帝国データバンクの「アパレル関連企業の倒産動向調査」では、アパレル小売業の倒産が前年度比3.5%増の149件、負債総額は前年度比で2倍以上に膨らんでいます。
2023年にはアパレル小売業の休廃業・解散が729件に達して、前年より15%以上も増えました。
小売業全体の倒産件数が全業種でワースト1になるほど、厳しい時代です。
「静かに消えていく店」が統計以上に多い
ただ、この数字はまだ氷山の一角やと思っています。
倒産という形で表に出るのは一部で、多くの店は「静かに閉店」していきます。
SNSの更新が止まり、営業時間が短くなり、気がついたらシャッターが下りている。
そういう「音もなく消えていく店」は、統計には反映されません。
わいのところに相談に来る人も、「もう3ヶ月くらい赤字が続いてて…」という段階ならまだマシなほうです。
「実はもう半年以上、自分の貯金を切り崩して店を回してます」という人も少なくありません。
そうなってからでは、打てる手がほとんど残ってない。
だからこそ、失敗のパターンを事前に知っておくことが大事なんです。
共通点①「服が好き」だけで始めてしまう
潰れる店の共通点、1つ目はこれです。
「服が好きだから」「ファッションが好きだから」という理由だけで起業してしまうパターン。
好きなことを仕事にしたい気持ちは分かります。
わいもそうやったから。
でも「好き」と「ビジネスとして成り立つ」はまったく別の話です。
「好き」と「ビジネス」の決定的な違い
ファッションが好きな人がやりがちなのが、自分のセンスだけで商品を選んでしまうこと。
「これカッコいいから仕入れよう」「このブランド好きやから置きたい」。
気持ちは分かりますが、これは「作品」を作っている状態であって、「商品」を作っている状態やありません。
作品は自分が満足すればいい。
でも商品は、お客さんが「お金を払ってでも欲しい」と思うものやないとあかんのです。
この区別がつかへん人が、本当に多い。
わいが見てきた中でも、失敗する人の半分以上がここでつまずいています。
ターゲットが「自分と同じ感性の人」では食えへん
もう一つよくあるのが、「わいと同じ感覚の人に届けたい」というコンセプト。
悪くないように聞こえますよね。
でも冷静に考えてみてください。
「あなたと同じ感覚の人」が、あなたの店の商圏に何人いますか?
その人たちの何割が、実際に来店してくれますか?
そのうち何人が、毎月買い物してくれますか?
この計算をしたら、大抵は「全然足りへん」という結論になります。
成功する店は、「誰に」「何を」「なぜ自分の店で買うのか」をちゃんと説明できます。
これが説明できへん状態で店を開けるのは、目隠しで車を運転するようなものです。
共通点②在庫を抱えすぎて資金ショートする
2つ目の共通点。これが一番多い「死因」かもしれません。
在庫を抱えすぎて、現金が回らなくなるパターン。
「これくらいは売れるやろ」が命取り
「この商品、絶対売れる!」と確信して大量に仕入れた結果、全然売れへん。
これ、アパレルあるあるです。
わいも2012年に海外の業者から格安で大量仕入れをしたことがあります。
「こんなに安く仕入れられるなら、利益率めっちゃ高いやん!」と興奮して大量発注しました。
結果、届いた商品の半分以上が販売できないレベルの品質でした。
300万円の損失。本当に目の前が真っ暗になりました。
「これくらいは売れるやろ」という希望的観測は、アパレルでは命取りです。
特に初心者は、まず少量で仕入れて市場の反応を見る。
これを徹底するだけで、致命傷は避けられます。
在庫は「お金が服に化けたもの」
在庫の怖さを理解するには、こう考えてください。
在庫は「お金が服に化けたもの」です。
100万円分の商品を仕入れたら、手元の現金が100万円減ります。
その服が売れて初めて、現金として戻ってくる。
売れなければ、お金は服のまま倉庫に眠り続けるわけです。
しかもアパレルはシーズン商品が多い。
夏物は秋になったら価値が激減します。冬物も同じ。
定価で売れへんくなったらセールで値下げして、それでも残ったら赤字覚悟で処分するしかない。
在庫回転率(仕入れた商品がどれくらいの速度で売れるか)を意識していない店は、じわじわと現金が減っていって、ある日突然「もう仕入れるお金がない」という状態に陥ります。
共通点③お金の使い方が下手
3つ目。これも致命的なやつです。
お金の使い方の優先順位を間違えるパターン。
「見栄えのいい店」にお金をかけすぎる
開業資金が300万円あったとします。
潰れる店と生き残る店で、お金の使い方がまるで違うんです。
| 項目 | 潰れる店の配分 | 生き残る店の配分 |
|---|---|---|
| 内装・設備 | 150万円(50%) | 50万円(17%) |
| 仕入れ | 100万円(33%) | 100万円(33%) |
| 運転資金(現金) | 50万円(17%) | 150万円(50%) |
この差、分かりますか?
潰れる店は内装にお金をかけます。
おしゃれな什器、こだわりの照明、雰囲気のある壁紙。
気持ちは分かります。自分の城やから、カッコよくしたいですよね。
でも冷静に考えてください。
お客さんは「内装がきれいやから」という理由で服を買いません。
服を買うのは、その服が欲しいからです。
一方、生き残る店は運転資金を厚く持ちます。
家賃、光熱費、仕入れの追加資金、予想外の出費。
こういった「守りのお金」がないと、ちょっとした売上の落ち込みで即座に詰みます。
「黒字なのに倒産」が本当に起こる
「え、黒字なのに潰れることあるんですか?」と驚く人がいますが、あります。
むしろアパレルでは珍しくない話です。
仕組みはシンプル。
商品は売れてるけど、売上金が入ってくるタイミングと、家賃や人件費を払うタイミングがズレるんです。
特に卸売りや委託販売をしていると、売掛金の回収に2〜3ヶ月かかることもあります。
その間にも家賃は毎月かかる。スタッフの給料も払わなあかん。
帳簿上は黒字でも、手元の現金が尽きたら終わりです。
これが「黒字倒産」の正体。
キャッシュフロー(現金の出入り)を把握していない経営者は、この罠にハマります。
共通点④「良いモノを作れば勝手に売れる」と信じている
4つ目の共通点。職人気質の人ほど陥りやすいパターンです。
商品を作ってからが本当の勝負
「とにかく良い商品を作ろう。品質にこだわろう。そうすれば口コミで広がるはず」。
これ、半分は正しいです。品質は大事。
でも残りの半分は幻想です。
どれだけ良い服を作っても、その存在を知ってもらえなければ売れません。
SNSで商品写真を1日1回アップして「今日の新入荷です」と書くだけでは、何千何万というアカウントの投稿に埋もれていきます。
わいが指導してきた中で、「商品の質は本当にいいのに売れてない」という店を何十件も見てきました。
共通しているのは、マーケティングへの投資がゼロに近いこと。
商品を作る(仕入れる)のはスタートラインに立っただけ。
そこからお客さんに届けるまでが、本当の勝負なんです。
売ることに「泥臭く」なれへん人は生き残れない
「わいはクリエイターやから、マーケティングとか営業とかやりたくない」。
こういうことを言う人、正直けっこういます。
気持ちは分かりますが、個人でアパレル起業するなら、売ることから逃げたらあかんのです。
生き残っている店のオーナーは、みんな売ることに泥臭い。
- インスタライブで毎週コーディネート提案をやっている
- メルカリやヤフオクにも出品して販路を広げている
- Googleマップの口コミを丁寧に増やしている
- 地元のイベントやマルシェに積極的に出店している
- LINEで常連さんに新入荷情報を送っている
一つの販路だけに頼るのも危険です。
インスタグラムのアルゴリズムが変わって突然リーチが減ったら、そこに依存していた店は一気に売上が落ちます。
複数の販路を持つことが、リスク分散になります。
共通点⑤変化に対応できない
最後、5つ目の共通点です。
市場の変化についていけない店は、遅かれ早かれ消えます。
アパレル市場は3年で別世界
アパレル業界の変化のスピードは、想像以上に速い。
5年前には考えられなかったことが、今は当たり前になっています。
- SHEINが日本市場に浸透して、低価格帯の競争が激化した
- メルカリやセカンドストリートの普及で、古着・中古品への抵抗感がなくなった
- インスタやTikTokで服を買う時代になった
- 「所有」よりも「体験」にお金を使う消費者が増えた
この変化に対応できていない店は、確実にお客さんが減っていきます。
「前はこれで売れてたのに」は禁句
一度成功した経験を持っている人ほど、変化への対応が遅れがちです。
「前はこの仕入れ先で十分やった」
「昔はインスタに載せれば売れた」
「以前はこの価格帯で回ってた」
「前は」「昔は」が口癖になったら黄色信号です。
わい自身、リーマンショックで2店舗閉めた時に痛感しました。
「今まで通りやってれば大丈夫」と思っていた自分が甘かった。
市場は変わる。お客さんの価値観も変わる。
その変化を「仕方ない」で片付けるのか、「じゃあどうする?」と考えるのか。
ここが生き残る人と消える人の分かれ道です。
失敗を避けるために今日からできること
ここまで5つの共通点を書いてきましたが、「じゃあどうすればいいんや」という話もしておきます。
まず「小さく始める」を徹底する
わいが一番強く伝えたいのは、最初から大きくやろうとするなということ。
いきなり路面店を借りるんやなくて、まずはメルカリやBASEで売ってみる。
フリーマーケットやマルシェで反応を見る。
間借り営業やポップアップショップで実店舗の感覚を掴む。
小さく始めれば、失敗しても傷が浅い。
学びながら徐々に大きくしていくのが、一番堅いやり方です。
数字と向き合う習慣をつける
「わいは数字が苦手で…」という人、多いです。
でもビジネスをやる以上、最低限の数字管理は避けて通れません。
毎月確認すべき数字はこれだけ。
- 売上(いくら売れたか)
- 原価(仕入れにいくらかかったか)
- 粗利(売上 − 原価)
- 固定費(家賃・光熱費・通信費など、売上に関係なくかかるお金)
- 手元の現金残高
特に「手元の現金残高」は毎週確認してください。
黒字倒産を防ぐには、現金の動きを常に把握しておくことが一番の防御策です。
「一人で抱え込まない」仕組みを作る
アパレル起業は孤独な戦いになりがちです。
特に個人でやっていると、相談できる相手がいない。
でも一人で全部判断するのは、かなり危険です。
自分では気づけない盲点が必ずあります。
同じ業界の先輩経営者とつながる。
起業家コミュニティに参加する。
必要であれば、専門家に相談する。
この「外の目を入れる」という習慣が、取り返しのつかない失敗を防いでくれます。
まとめ
アパレル起業で失敗する人の共通点を5つ、お伝えしました。
- 「服が好き」だけで始めてしまう
- 在庫を抱えすぎて資金ショートする
- お金の使い方の優先順位を間違える
- 「良いモノを作れば売れる」と思い込む
- 市場の変化に対応できない
どれも特別なことやありません。
むしろ「当たり前のことを当たり前にやれるかどうか」の勝負です。
わいも何度も失敗してきました。
300万円損したこともあるし、店を2つ潰したこともある。
でもそのたびに立ち上がって、失敗から学んで、今があります。
アパレル起業は甘い世界やありません。
でも、正しいやり方を学んで、コツコツ続けていけば、必ず道は開けます。
皆さんの挑戦を、心から応援しています。
一緒に頑張りましょう。