古着のコーディネート提案で客単価アップ!セット売り戦略とスタイリングPOPの作り方

「このTシャツ、めっちゃ気に入りました。これだけください」

古着屋をやってはる人なら、この言葉を何回聞いたことでしょう。
お客さんは満足して帰らはる。
店側もお会計をもらえて悪い気はしません。
でも、正直に言うと、これだけで終わってしまうお店は、ずっと客単価の壁にぶつかり続けます。

私は大阪で古着セレクトショップを3店舗まで育てて、その後コンサルタントとして500名以上の古着ビジネス起業家を見てきました。
その中で一番もったいないと感じるのが、「良い商品を仕入れてるのに、単品でしか売れてへん」お店です。

今日は、単品売りから抜け出すための「コーディネート提案」と「セット売り戦略」、それを支える「スタイリングPOP」の作り方について、私の実体験も交えながらお伝えします。

なぜ古着屋は「単品売り」だけでは客単価が伸びへんのか

まず最初に、なんで古着屋という業態が単品売りに陥りやすいのかを整理しておきます。
これを分かってへんと、コーディネート提案を導入しても、また同じ壁にぶつかります。

古着の価格帯そのものが「単品完結」しやすい

中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の古着店に関する2025年版の調査データによると、古着の利用金額は「2,000円未満」が44.3%でもっとも多く、5,000円未満まで含めると全体の8割を超えるそうです。

これ、新品のアパレルショップとは全然違う数字です。
新品なら1着1万円を超えることも珍しくないので、1点買っただけでもそこそこの客単価になります。
でも古着の場合、1点あたりの単価が低い分、点数を増やしてもらわへんと客単価そのものが上がりません。

「一点だけ気に入って帰る」お客さんが多い理由

私が最初に大阪でお店をやってた頃、お客さんの多くはこう言うてました。

「掘り出し物を見つけに来た」
「このジャケットがピンときたから買いに来た」

古着屋に来るお客さんは、新品のセレクトショップよりも「一点モノ」への思い入れが強いんです。
だからこそ、その一点を見つけた瞬間に満足してしまって、他の商品を見る前にレジに向かってしまいます。

これは悪いことやありません。
古着屋ならではの魅力の裏返しでもあります。
問題は、店側がその後の一歩を用意してへんことなんです。

客単価は「買上率」と「セット率」のかけ算で考える

ここで一つ、頭に入れておいてほしい考え方があります。
アパレル業界では、売上を「客数×買上率×客単価」という式で捉えるのが基本です。

さらに客単価を分解すると、「セット率」という指標が出てきます。
セット率というのは、総売上数量を購入客数で割った数字で、簡単に言うと「お客さん一人あたり何点買ってくれたか」を表します。

つまり、客単価を上げるには、来店客数を増やすより先に、このセット率を上げる方が現実的な打ち手になることが多いんです。
広告費をかけて新規客を呼ぶよりも、今まさに気に入った一点を手にしているお客さんに、もう一点提案する方がずっと簡単やからです。

コーディネート提案で客単価を伸ばす仕組み

セット率を上げる一番の武器が、コーディネート提案です。
ここでは具体的に何をすればいいのか、私が現場で実践してきたやり方をお伝えします。

単品提案ではなく3〜5パターンのコーデを用意する

一番大事なのは、商品を「単体」で見せるのをやめることです。
1着のジャケットを提案するにしても、そのジャケットに合うボトム・トップス・小物まで含めて、3パターンから5パターンくらいコーディネートを用意しておきます。

なんでパターンを複数用意するかというと、お客さんによって好みのテイストが全然違うからです。
きれいめに寄せたい人もいれば、カジュアルダウンしたい人もいます。
1パターンしか提案できへんスタッフやと、たまたまその提案がハマった人しか買ってくれません。

私が指導してきた店舗では、朝礼の前に「今日イチオシの商品に対して、スタッフそれぞれが違うコーデ案を1つずつ出す」という練習を続けてもらうことがあります。
これを1ヶ月くらい続けるだけで、スタッフの提案の引き出しが目に見えて増えていきます。

マネキン・什器をコーディネートセットにする

もう一つ効果的なのが、什器やマネキンの使い方です。
トップス単体、ボトム単体で陳列するんやなくて、トップス×ボトム×アウター×小物という形で、マネキンに一つの完成されたコーディネートを着せておきます。

テーブル什器も同じ発想で、ジャケットのそばにそのジャケットに合わせたニットやストールを一緒に置いておくんです。
お客さんは「このジャケット、こう合わせるんや」と視覚的に理解できるので、単品では思いつかへんかった組み合わせを自然に提案できます。

プラスワン提案は小物から始める

コーディネート提案をする上で、いきなり高い商品を勧めるのは逆効果です。
私も最初の頃、ジャケットを買うてくれたお客さんに「このパンツも合わせてみませんか」と、いきなり本体に近い価格帯の商品を勧めて、明らかに引かれてしまった経験があります。

今は逆にしてます。
ジャケットを気に入ってもらえたら、まずベルトやソックス、キャップといった単価の低い小物から声をかけます。
「せっかくなんで、足元だけ合わせてみません?」くらいの軽さです。

小物は値段が低い分、お客さんの心理的なハードルも低くなります。
そこで一度「追加で買う」という体験をしてもらえると、次のワンステップ上の提案も受け入れてもらいやすくなります。

セット売り戦略の作り方【価格設計編】

コーディネート提案と両輪になるのが、セット売りの価格設計です。
ここは「なんとなく割引する」んやなくて、きちんと仕組みとして作り込むことが大事です。

上下セット割引の設計例

一番シンプルなのが、上下セットで購入してもらった場合の割引です。
私が関わってきた店舗でよく採用してるのは、次のような段階的な設計です。

購入パターン割引の目安
単品のみ割引なし
トップス+ボトムのセット合計から5%OFF
セット+小物(ベルト・ソックス等)合計から7%OFF

割引率そのものは、店の利益率と相談しながら決めてもらったらいいんですが、大事なのは「セットで買うと得やな」とお客さんが一目で分かる仕組みにすることです。
複雑な計算をせんとお得さが伝わるくらいシンプルにしといてください。

「今日のコーデ〇点で〇円」という分かりやすい価格訴求

もう一つ効果的なのが、セット価格そのものをまるっと打ち出すやり方です。
「アウター+ニット+ボトムで9,900円パック」のように、点数と総額をセットで見せます。

これの何がええかというと、お客さんが頭の中で計算せんでも「あ、これくらいの予算感なんや」と一瞬で理解できることです。
古着は一点一点値段がバラバラなので、単品の値札だけ見てても全体の予算感がつかみにくいんです。
セット価格として見せることで、逆にお客さんの決断が早くなります。

アウターを絡めたセット提案が効く理由

セット提案の中でも、特に客単価へのインパクトが大きいのがアウターを絡めたパターンです。
アウターはトップスやボトムに比べて単価が高い商品なので、これを含めたセットになるだけで合計金額がぐっと上がります。

私の経験で言うと、ボトムを買いに来はったお客さんに対して、いきなりアウターを勧めても、なかなかうまくいきません。
でも、トップスとボトムのコーディネートが決まった段階で「羽織りものがあると、この季節ちょうどええですよ」と自然に見せると、意外とすんなり検討してもらえます。

これは絶対にやったらあかんのが、アウターを最初から前面に押し出して「これも一緒にどうですか」と強く勧めることです。
コーディネートの完成形として自然に見せる、この順番が大事です。

スタイリングPOPの作り方【実践編】

コーディネート提案とセット売りを、スタッフが不在の時間帯でも機能させてくれるのがスタイリングPOPです。
ここからは具体的な作り方に入ります。

POPに入れるべき3つの情報

スタイリングPOPに詰め込む情報は、欲張らずに3つに絞るのがコツです。

  • コーディネートの組み合わせ(どのアイテムとどのアイテムを合わせているか、写真やイラストで示す)
  • セット価格(単品価格だけでなく、セットで買った場合の合計金額や割引率をはっきり書く)
  • 着用シーン(「秋の休日デートに」「オフィスカジュアルに」など一言添える)

着用シーンは特に効果的です。
具体的なシーンを一言添えるだけで、お客さんは自分がそれを着てる姿を想像しやすくなります。

情報を詰め込みすぎたPOPは、結局誰も読んでくれません。
この3つに絞ったら、あとは思い切って削ってください。

VMDを意識したPOPの設置場所

POPは作ることよりも、どこに置くかの方が実は重要やったりします。

日本ビジュアルマーチャンダイジング協会(JAVMA)が長年提唱してきたVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の考え方では、売り場を「VP」「PP」「IP」という3つの階層で捉えます。
ざっくり言うと、VPは店全体の世界観を伝えるゾーン、PPは各コーナーの主役商品を見せるゾーン、IPは実際に手に取って選んでもらう陳列そのものです。

スタイリングPOPが一番効くのは、このPPの部分です。
店に入ってすぐの目立つマネキンや、通路の突き当たりといった、お客さんの視線が自然に集まる場所にコーディネート提案のPOPを置くと、そこで足を止めてもらいやすくなります。
逆に、棚の奥に隠れたところに貼っても、誰の目にも留まりません。

手書き・シンプルPOPで十分な理由

POPと聞くと、デザインソフトで凝ったものを作らなあかんと思う人がいますが、古着屋に関して言えば、手書きのシンプルなPOPで十分やと私は思ってます。

むしろ、古着という商材の温かみと、手書きの文字は相性がええんです。
きれいに整いすぎたPOPより、スタッフの字でコーディネートのポイントが書いてある方が、お客さんとしても「店員さんのおすすめなんやな」と親近感を持ってくれます。

大事なのは見た目の綺麗さやなくて、さっき挙げた3つの情報がちゃんと入ってるかどうかです。
ここを間違えて、デザインに時間をかけすぎてしまうお店を何軒も見てきました。

私が経験した失敗と、そこから学んだコツ

ここまで理屈っぽい話が続いたので、私自身の失敗談も正直にお話しします。
セット売りとPOPの導入は、やり方を間違えると逆効果になることもあるんです。

セット売りを押し付けて逆に引かれた失敗

大阪の1号店を始めたばかりの頃、私はセット率を上げることに必死になりすぎて、スタッフに「とにかくセットで勧めろ」と指示してました。

結果、お客さんが一点だけ買おうとしてるのに、スタッフがしつこく追加提案を続けてしまう場面が何度もありました。
中には「そんなに要らんし」と、レジに向かう前に商品を戻して帰ってしまったお客さんもいます。

この失敗から学んだのは、セット売りはあくまで「提案」であって「説得」やないということです。
お客さんが一度断ったら、そこでスッと引く。
この引き際を教えるのに、正直かなり時間がかかりました。

POPを作りすぎて店が雑然とした失敗

もう一つの失敗が、POPの作りすぎです。
コーディネート提案が大事やと分かった途端、店中の商品にPOPを付けまくった時期がありました。

結果、店に入った瞬間に情報量が多すぎて、お客さんがどこを見たらええか分からんくなってしまったんです。
POPだらけの店は、逆に「押し売り感」が出てしまうことも、この時に痛感しました。

今の店で実践している改善後のやり方

今、私が指導してる店舗でやってもらってるのは、POPを置く商品を「その週のイチオシ」に絞る方法です。
全商品にPOPを付けるんやなくて、店全体で5点から10点くらいに絞り込んで、そこだけしっかりコーディネート提案をします。

セット提案についても、スタッフには「一回提案して反応が薄かったら、それ以上は追わない」というルールを徹底してもらってます。
このくらいの距離感の方が、結果的にお客さんとの信頼関係もでき、セット率も安定して上がっていきました。

まとめ

古着屋の客単価アップは、単品売りからコーディネート提案への発想の転換から始まります。

3〜5パターンのコーデを用意して、マネキンや什器で視覚的に見せる。
セット価格をシンプルに設計して、アウターを絡めた提案で単価を底上げする。
そして、スタッフが不在でも伝わるスタイリングPOPで、その提案を売り場全体に広げる。

どれも派手な施策やありませんが、コツコツ積み重ねることで、確実に数字は変わってきます。
私自身、押し付けて失敗した経験もありますが、そこから引き際を学んで今の形にたどり着きました。

皆さんのお店でも、まずは1つのコーナーからで構いません。
今日お話しした内容を試してみてください。
一緒に頑張りましょう。