古着屋を開きたいと思ったとき、真っ先に服を仕入れたくなる人は多いです。
ええ商品が手元に来ると、商売が始まった気になりますからね。
ただ、正直に言うと、最初に仕入れへ走るのはおすすめしません。
先に決めるのは「誰に、どんな古着を、どこで売るか」と「いくらまでなら失っても生活に響かないか」です。
私は大阪で古着店を3店舗まで広げ、いまは古着ビジネスの立ち上げを支援している佐藤健一です。
うまくいった店だけやなく、売上が半分になって2店舗を閉めた経験も、海外仕入れで300万円の損失を出した経験もあります。
この記事では、古着屋を開業したい人が最初の30日でやることを、日程順のチェックリストにしました。
30日後に目指すのは立派な店を完成させることやなく、許可、資金、仕入れ、販売の見通しを持ち、小さなテストを終えることです。
目次
古着屋開業の最初の30日で目指す状態
30日で開店を急がなくていい
「1か月で古着屋をオープンするぞ」と期限を切るのは、行動を始めるきっかけにはなります。
けれども、物件契約、内装、古物商許可、商品の確保までを無理に30日へ詰め込む必要はありません。
許可や物件が絡む以上、自分だけでは日程を決められない工程もあります。
許可が出る時期を自己判断し、先に大量の商品や什器を買うと、開店できないまま支払いだけが始まることもあります。
最初の30日は、開業の土台を作る期間です。
焦って店を持つより、売れる形を一度試した人のほうが、その後の判断はずっと堅くなります。
先に決めるのは「誰に、何を、どこで売るか」
「おしゃれな古着を幅広く扱います」では、仕入れ基準も価格も定まりません。
20代の学生に手頃なアメカジを売る店と、40代の会社員に上質なヴィンテージを売る店では、商品写真も接客も家賃を払える水準も変わります。
次の一文を、自分の言葉で埋めてみてください。
私の店は、[地域や生活像]の人に、[商品ジャンル]を、[価格帯]で、[販売場所]を通して届ける店です。
たとえば、「大阪市内で働く25〜35歳の人に、仕事帰りにも着られるユーロ古着を、5,000〜15,000円で、ネットと週末の間借り店舗から届ける」と書けます。
ここまで具体的なら、競合調査で見る店も、仕入れる服も選びやすくなります。
30日後の合格ライン
30日後に、次の状態まで進んでいれば十分です。
- 顧客像、商品ジャンル、価格帯を一枚にまとめている
- 開業に使える金額と、毎月必要な売上を計算している
- 古物商許可について管轄警察署へ確認し、申請準備を進めている
- 仕入れ先を複数比較し、総原価を把握している
- 10〜20点程度の商品で、撮影から発送までの流れを試している
- 数字を見て、続行、修正、延期のどれかを判断できる
全部を完璧にする必要はありません。
分からない項目が分かる状態になっただけでも、最初の1か月としては前進です。
1〜7日目:店の軸と使えるお金を決める
1日目:開業目的と生活条件を書き出す
まず、なぜ古着屋をやりたいのかを書いてください。
服が好きだからでも、副業で月5万円を作りたいからでも、地域に面白い店を増やしたいからでもかまいません。
目的と一緒に、週に使える時間、生活費、家族の理解、現在の仕事を辞める時期も書きます。
店の理想だけを考えて生活条件を後回しにすると、売上が安定する前に資金も気力も切れてしまいます。
会社員のまま始めるなら、勤務先の就業規則も確認します。
平日の発送が難しい人は、発送日を週2回に固定するなど、続けられる運営に合わせたほうがええです。
2〜3日目:顧客と商品ジャンルを一つに絞る
次に、最初に狙う顧客と商品を決めます。
古着市場にはユーズド、インポート、ヴィンテージ、デッドストックなどがあり、年代、国、ブランド、テイストでも細分化できます。
初心者が「何でもあります」を目指すと、店の印象が薄くなり、在庫だけが増えがちです。
最初は狭くてかまいません。
顧客が普段どこで服を買い、1着にいくら払い、どんな場面で着るのかまで想像します。
自分の好みと顧客の買い物が重なる場所を探すんです。
4〜5日目:競合店を実地・オンラインで調査する
候補となる実店舗を3店、ネットショップを5店ほど見ます。
ただ眺めるのではなく、価格、品数、更新頻度、写真、説明文、接客、客層を同じ項目で記録してください。
実店舗では、平日と休日のどちらか一方だけを見て判断しないことです。
通行量が多くても、店の顧客になりそうな人が歩いているとは限りません。
ネットでは、売り切れ商品も見ます。
在庫一覧だけでは「置いている商品」は分かっても、「売れた商品」は分からないからです。
調査の目的は、競合のまねをすることやありません。
顧客がすでに持っている選択肢を知り、自分の店を選ぶ理由を言葉にするためです。
6〜7日目:資金計画と損益分岐点を作る
資金は、開業時に一度だけ払うお金、毎月出ていくお金、商品が売れるたびにかかるお金へ分けます。
日本政策金融公庫も、創業前に必要資金、調達方法、販売計画、仕入計画、収支計画を整理するよう案内しています。
下の金額は、オンライン中心で小さく始める場合の試算例です。
実際の金額は使うサービス、商品数、撮影環境によって変わります。
| 項目 | 試算額 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 古物商許可申請手数料 | 19,000円 | 管轄警察署の最新案内を確認 |
| 初回仕入れ | 100,000円 | 仕入代、送料、関税等を分ける |
| 洗濯・補修用品 | 20,000円 | 洗剤、スチーマー、補修資材 |
| 撮影・梱包用品 | 30,000円 | 照明、背景、箱、袋など |
| 販売基盤 | 10,000円 | 店舗名、独自ドメイン等の初期費用 |
| 予備費 | 50,000円 | 返品、値下げ、不良在庫に備える |
| 合計 | 229,000円 | 生活費とは別に確保する |
実店舗なら、ここへ保証金、前家賃、仲介手数料、内装、什器、レジ、防犯設備などが加わります。
物件を借りる前に、最低でも複数の見積もりを取り、手元資金が何か月持つかを計算してください。
損益分岐点も粗くてええので出します。
固定費が月15万円で、1着売るごとに残る粗利益が3,000円なら、固定費を回収するには月50着が必要です。
ここでいう粗利益は、販売価格から仕入代だけを引いた数字ではありません。
仕入送料、洗濯、補修、販売手数料、決済手数料、梱包など、販売に直接かかる費用を含めて見ます。
8〜14日目:許可と販売方法を固める
古物商許可の準備を始める
中古品を仕入れて事業として販売するなら、古物商許可の確認を避けて通れません。
警視庁の案内では、主たる営業所を管轄する警察署が申請窓口で、手数料は1万9,000円です。
個人申請では、許可申請書、略歴書、本籍が記載された住民票の写し、誓約書、身分証明書などが案内されています。
ネット販売の形態によっては、URLを使用する権限を示す資料も必要です。
必要書類や営業所の扱いは、自分の営業形態と地域によって事前確認したほうが確実です。
8日目までに、管轄警察署の担当窓口へ電話し、訪問日時と必要書類を聞いておきましょう。
これは絶対にやったらあかんのですが、「申請したから、もう販売しても大丈夫」と考えてはいけません。
許可を受ける前提で開店日を告知せず、販売開始日は余裕を持って決めます。
実店舗・オンライン・併用を選ぶ
初めての開業なら、固定費の小さいオンライン販売や、イベント出店、間借り営業から需要を確かめる方法があります。
実店舗には試着、接客、空間づくりの強みがありますが、家賃は売れない月にも出ていきます。
| 販売方法 | 向いている人 | 最初に確認する弱点 |
|---|---|---|
| オンライン | 固定費を抑え、広い地域へ売りたい人 | 撮影、採寸、発送、返品対応の手間 |
| 実店舗 | 接客や店の世界観を強みにしたい人 | 家賃、内装費、立地の見極め |
| 併用 | 店頭とネットの両方で在庫を動かしたい人 | 在庫の二重販売と作業量の増加 |
| 間借り・催事 | 常設店の前に対面販売を試したい人 | 開催日の制約と保管場所 |
オンラインで売る場合も、表示義務があります。
古物商は、公安委員会名、許可証番号、氏名または名称をホームページ上に表示する必要があり、個人許可では店名だけの表示では足りません。
特定商取引法に基づく表示も用意します。
販売価格、送料、支払方法、商品の引渡時期、返品条件、事業者の氏名・住所・電話番号などを、消費者庁の通信販売に関する案内で確認してください。
税務と会計の土台を作る
個人事業で始めるなら、事業用の口座とカードを私生活用から分けます。
一枚のレシートを探す時間は小さく見えますが、仕入れが増えると経理の遅れに直結します。
国税庁の令和8年度案内では、個人事業の開業届は開業した年分の所得税の確定申告期限までです。
青色申告を選ぶ人が1月16日以後に開業した場合、青色申告承認申請書は開業日から2か月以内とされています。
開業日や雇用の有無で手続きが変わるため、詳しくは国税庁の個人で事業を始めたときの案内を確認します。
税務上の判断に迷う場合は、税務署や税理士へ相談してください。
会計は初日から始めます。
仕入日、商品番号、仕入先、仕入額、諸経費、販売日、販売額を同じ表で追えるようにしておくと、売れ筋と利益が見えます。
15〜21日目:小さく仕入れて販売工程を試す
仕入れ先候補を三系統で持つ
仕入れ先は、一つに依存しないほうが安定します。
国内卸、個人からの買い取り、海外仕入れなど、条件の違う候補を比較してください。
比較するのは値段だけではありません。
最低発注量、商品の選び方、品質基準、送料、納期、返品条件、継続供給の見込みまで確認します。
海外仕入れを検討するなら、現地との連絡や輸送、通関も仕事に含まれます。
NIPPON47はタイ、パキスタン、ドバイなどの拠点を持ち、古着仕入れ、ベール仕入れ、輸出入を支援しており、個人からの相談も受け付けています。
仕入れ代行には渡航費や言葉の壁を減らせる利点がある反面、自分の目で商品を直接確かめにくい弱点があります。
問い合わせるときは、欲しいジャンル、数量、予算、許容できるダメージ、希望納期を先に伝えると話が早いです。
最初から大量のベールを買わない
ベールは衣類を圧縮して梱包した荷姿で、一度に多く仕入れられます。
単価だけを見ると魅力がありますが、全部が自店で売れる商品とは限りません。
私も2012年、安さに目がくらんで海外から大量仕入れをし、届いた商品の半分以上が販売できない品質で、300万円を失いました。
あのとき足りなかったのは目利きより、検品条件と損失上限の取り決めでした。
最初のテストでは10〜20点ほどに抑え、販売できた割合と利益を見ます。
大量仕入れは、どのジャンルが、どの価格で、何日ほどで売れるかが分かってからでも遅くありません。
値付けは総原価から逆算する
1,000円で仕入れた服を3,000円で売れば2,000円の利益、とは限りません。
洗濯や補修に300円、送料に750円、梱包に100円、販売・決済手数料に300円かかれば、残る金額は550円です。
商品ごとに、次の費用を足してください。
- 商品の仕入代と仕入先から届くまでの送料
- 関税や輸入消費税など海外仕入れに伴う費用
- 洗濯、しみ抜き、補修、アイロンがけの費用
- 撮影、保管、梱包にかかる費用
- 販売サービスと決済の手数料
- 購入者へ送る送料と返品に備える費用
自分の作業時間も記録します。
最初から人件費として正確に配賦できなくても、1着の出品に40分かかるのか10分で済むのかでは、続けられる商品数がまるで違います。
10〜20点で販売の予行演習をする
許可が必要な販売を無許可で始めるのではなく、許可取得後の動きを想定して、検品、洗濯、採寸、撮影、説明文作成、梱包まで通して練習します。
身近な人に商品ページを見てもらい、サイズ、傷、色味、返品条件が分かるか確認してもらうのも有効です。
写真は、正面、背面、タグ、生地、傷や汚れを同じ順番で撮ります。
説明文ではブランド名や年代を無理に断定せず、確認できる事実と実寸を丁寧に書きます。
古着は一点ごとに状態が違います。
傷を隠して一度売るより、先に見せて納得して買ってもらうほうが、返品対応も信用の毀損も減らせます。
22〜30日目:売れる仕組みを作って開業日を判断する
商品登録の型を作る
毎回ゼロから出品すると、点数が増えた途端に手が止まります。
商品番号の付け方、採寸箇所、写真の順序、説明文、保管場所を統一してください。
説明文のひな型には、ブランド、表記サイズ、実寸、素材、色、状態、補修歴、発送方法を入れます。
古着特有の使用感を一言で済ませず、購入判断に影響する状態は写真と文章の両方で伝えます。
在庫表の商品番号と、保管袋の商品番号も合わせます。
売れたのに商品が見つからない事態は、店が小さいうちから防げます。
集客は一つのSNSに絞る
最初から複数のSNSを毎日更新しようとすると、仕入れや出品が止まります。
顧客がよく使う媒体を一つ選び、30日間は投稿の型を作ることへ集中します。
商品写真だけでなく、選んだ理由、着こなし、補修の様子、店を始める過程も発信材料になります。
投稿ごとに反応を見て、保存や問い合わせにつながった内容を残してください。
フォロワー数だけを追う必要はありません。
店の商品を買いそうな人から、サイズや入荷について具体的な質問が来ているかを見るほうが商売に近い数字です。
接客・返品・在庫管理のルールを決める
開業前に、問い合わせへの返信時間、取り置き、値下げ交渉、返品、配送事故への対応を決めます。
その場の気分で対応を変えると、顧客にも自分にも負担が残ります。
オンライン販売では、返品特約を見やすく表示します。
サイズが合わない場合、説明にない傷があった場合、購入者都合の場合を分け、期限と送料負担を明記してください。
実店舗なら、レジ締め、試着室、万引き対策、買取をする場合の本人確認と記録も運用へ落とし込みます。
自分一人で回せない工程が見えたら、営業時間や商品数を減らす判断も必要です。
30日目に継続・修正・延期を判断する
30日目には、気合いや手応えではなく、集めた数字を見ます。
予算内に収まったか、想定価格で売れそうか、1着にかかる作業時間は現実的か、仕入れを続けられるかを振り返ります。
うまくいかなかった項目があっても、開業に向いていないと決めつける必要はありません。
商品ジャンルを狭める、実店舗を延期する、仕入れ数を減らすなど、損失が小さいうちに直せばええんです。
失敗は成功の母といいますが、商売では小さく失敗する設計が大切です。
取り返せない契約をする前に試せたなら、その30日は無駄やありません。
古着屋開業30日チェックリスト
1〜7日目
- [ ] 開業目的、使える時間、生活費への影響を書いた
- [ ] 顧客像、商品ジャンル、価格帯、販売場所を一文にした
- [ ] 実店舗3店とネットショップ5店を同じ項目で調べた
- [ ] 初期費用、月の固定費、商品ごとの変動費を計算した
- [ ] 損失の上限と撤退・見直しの基準を決めた
8〜14日目
- [ ] 管轄警察署へ古物商許可の必要書類と申請方法を確認した
- [ ] 実店舗、オンライン、併用、間借りのどれで始めるか決めた
- [ ] ネット販売の許可情報と特定商取引法上の表示項目を確認した
- [ ] 事業用口座と会計記録の方法を決めた
- [ ] 開業届や青色申告承認申請の期限を確認した
15〜21日目
- [ ] 仕入れ先を価格以外の条件も含めて比較した
- [ ] 最初のテスト仕入れを10〜20点程度に抑えた
- [ ] 仕入れから販売までにかかる総原価を商品ごとに出した
- [ ] 検品、洗濯、採寸、撮影、梱包を通して練習した
- [ ] 傷や汚れを隠さず伝える商品説明の型を作った
22〜30日目
- [ ] 商品番号、撮影順、採寸、説明文、保管場所を統一した
- [ ] 集客に使うSNSを一つ選び、投稿内容を試した
- [ ] 返品、配送事故、取り置き、問い合わせ対応のルールを決めた
- [ ] 売上だけでなく粗利益と作業時間を確認した
- [ ] 続行、修正、延期のどれにするか数字で判断した
初心者が最初の30日でやったらあかんこと
物件を勢いで契約する
内見で気分が上がり、「ここを逃したら次はない」と感じることがあります。
それでも、家賃だけで判断してはいけません。
保証金、仲介手数料、内装、原状回復、看板、防犯設備まで含め、契約書は専門家にも確認してもらいます。
売上がゼロでも何か月払えるかを計算できないうちは、契約を急がないほうが安全です。
安さだけで大量仕入れする
安く買えた商品と、利益を出して売れる商品は別物です。
自店の顧客に合わない服は、仕入単価が低くても保管場所と資金を使い続けます。
最初は少量で売れ行きを見て、仕入れ先ごとの販売率、値下げ率、不良率を残します。
仕入れを増やすのは、その記録がたまってからです。
売上と利益を混同する
月に50万円売れても、仕入れと送料、手数料、家賃で55万円かかれば赤字です。
売上の画面だけを見て喜ばず、商品ごとの粗利益と月全体の営業損益を分けて確認します。
自分の生活費を店の売上から無計画に引き出すのも危険です。
事業資金と生活資金を分け、何か月持つかを毎月更新してください。
許可が出る前提で販売日を確約する
申請書を出した日と、許可を受けた日は同じではありません。
許可取得前に販売を始めたり、確実でない開店日を顧客へ約束したりすると、後で信用を失います。
手続きの進み方は管轄警察署へ確認し、開店準備は余裕を持って組みます。
分からない点を自己判断で埋めず、担当窓口へ聞くのが一番早いです。
まとめ
古着屋開業の最初の一歩は、服を買うことや物件を借りることではありません。
誰に何を売るのか、いくら使えるのか、許可と販売方法をどうするのかを紙に書くことです。
最初の30日で、小さな仕入れと販売工程のテストまで進めば、次に使うお金の根拠ができます。
数字が合わなければ、店の形を変えたらええんです。
古着ビジネスは決して楽な商売やありません。
それでも、小さく試し、記録し、直すことをコツコツ続ければ、昨日より確かな判断ができるようになります。
まずは今日、顧客と商品と販売場所を一文にしてください。
そこから始めましょう。
一緒に頑張りましょう。