「古着屋は儲からない」は本当か?赤字経営になる人の共通点と黒字化のポイント

「古着屋って儲からないらしいで」「半年で潰れる店も多いって聞くし、夢見すぎたらあかんで」。そんな声を耳にして、独立への一歩を踏み出せずにいる方は多いんやないでしょうか。SEOや経営の話以前に、まず「本当のところどうなん?」が知りたい。痛いほどよく分かります。

はじめまして。株式会社ヴィンテージ・サクセス代表の佐藤健一です。私自身、20代でアパレル商社の営業を経験し、2008年に古着セレクトショップを立ち上げて3店舗まで広げ、2015年に事業を売却。その後はコンサルタントとして500名を超える古着ビジネス起業家さんの伴走をしてきました。儲かった話も、300万円飛ばした話も、両方リアルに知ってる立場として、忖度なしでお伝えします。

この記事では、まず「古着屋は儲からない」と言われる本当の背景を市場データから整理した上で、赤字経営に陥る人に共通する落とし穴、そして黒字化を実現する具体策を5つずつまとめました。最後にはリアルな収支シミュレーションも載せてます。これから開業を検討する方、いま赤字に苦しんでいる方、両方のヒントになれば嬉しいです。

「古着屋は儲からない」と言われる本当の理由

正直に言うと、「古着屋は儲からない」という言葉は半分本当で、半分は嘘です。大事なのは、なぜそう言われているのかを冷静に分解すること。市場全体は確実に伸びてるんですわ。

古着市場は実は急成長フェーズにある

最初に押さえてほしいのが、古着市場全体は決して縮小していないという事実です。むしろ過去最高の伸びを記録しています。

矢野経済研究所が公表しているファッションリユース市場に関する調査(2024年)によると、2023年の国内ファッションリユース市場は小売金額ベースで1兆1,500億円(前年比113.9%)に達し、2024年には1兆2,800億円(前年比111.3%)まで拡大する見込みです。2桁成長が続く分野なんて、いまの日本ではそう多くありません。

世界に目を向けても、グローバルの古着市場は2028年までに約3,500億ドル規模に達すると予測されており、ファストファッションの2倍近くまで成長するという見立ても出ています。背景にあるのは、Z世代を中心とした「サステナブル志向」と「他人とかぶらないモノ探し」のニーズです。

つまり、市場の風向きは追い風。なのに、なぜ「儲からない」と言われ続けるのか。ここを取り違えると、戦略を誤ります。

それでも「儲からない」と感じる人が多い理由

ポイントは、市場の成長と一店舗の収益性は別の話ということです。市場が伸びている分、参入者も急増しています。Instagramを開けば毎日のように「新しいオンライン古着屋を始めました」という投稿が流れてきますよね。

私が現場で見てきた限り、「儲からない」と嘆くオーナーさんに共通しているのは次のような状況です。

  • 月商はそれなりに立っているのに、利益がほとんど残らない
  • 売れ筋がブレて、季節を跨いだ死蔵在庫が膨らんでいる
  • SNSは続けているのに、来店やECの購入につながらない
  • 家賃と人件費でキャッシュが毎月削られていく

要するに、市場は伸びているのに「自分の店だけ取り残されてる」状態。市場のせいではなく、戦略と仕組みの問題なんです。ここを理解せずに「業界がアカンのや」と決めつけてしまうと、改善の糸口が見えなくなってしまいます。

赤字経営になる古着屋オーナーに共通する5つの落とし穴

ここからは、私が500名以上のオーナーさんを見てきて「だいたいこのどれかでつまずいてはるな」というパターンを5つ整理します。耳が痛い部分もあるかもしれませんが、あくまで「共通点」として読んでもらえると嬉しいです。

落とし穴1:仕入れを「安さ」だけで判断している

これ、ほんまに多いです。私自身、開業当初に痛い思いをしました。

2012年のことですが、海外の業者から「ベール仕入れ(圧縮された大量パック)」を格安で大量に発注したところ、届いた商品の半分以上が販売できないレベルの品質でした。リーバイスのデニムやチャンピオンのスウェットに混ざって、ヨレヨレの謎ブランドTシャツやシミだらけのシャツが山のように入っていて、ロス率は50%超え。最終的に300万円の損失を出して、本気で頭を抱えました。

ベール仕入れは単価を最も抑えられる方法ですが、中身が見えないギャンブル要素が強い。特に近年は「日本の業者が良いものだけ抜き出して再ベール化したもの」が出回っているとも言われていて、初心者ほどハズレを引きやすい構造になっています。

「単価が安い=利益が出る」やないんです。販売に至らない在庫はゼロ円どころかマイナスの資産。倉庫を圧迫し、整理する人件費まで削っていきます。

落とし穴2:在庫回転率を意識せず死蔵在庫を抱える

赤字店舗のバックヤードを見せてもらうと、ほぼ100%の確率で「半年以上動いていない服」が眠っています。

アパレル業界全般では、在庫回転率の目安は年10〜11回転とされており、これはおよそ1ヶ月で在庫が一巡する計算です。古着屋の場合は一点モノが基本なので単純比較はできませんが、「同じ商品が3ヶ月以上店頭に並んでいる状態」は黄色信号です。

私の経験では、古着屋の死蔵在庫は次の3ステップで処理するのが鉄則です。

  • 1ヶ月動かなかったら陳列場所を変える
  • 2ヶ月動かなかったらディスカウントor抱き合わせ販売
  • 3ヶ月動かなかったらフリマアプリ・卸ルートで現金化

「いつか売れるかも」は資金繰りの敵。古着は鮮度が落ちると、価値が二度と戻らないジャンルがあるんです。

落とし穴3:立地と商圏を読み違えている

実店舗を構える場合、立地選びが成否の8割を決めると言っても言い過ぎではありません。家賃を抑えたいあまり「人通りの少ない裏路地」を選んで、そのまま集客に苦しむケースは後を絶ちません。

逆に、路面店の家賃を払えるだけの来客数を見込めない商圏で、坪単価の高い物件を借りてしまうのも危険です。私が見たケースでは、月家賃25万円の物件に飛びついたものの、損益分岐点となる月商が150万円だったのに対し、実売上は月70万円程度。半年でキャッシュが尽きて閉店、という流れでした。

立地を選ぶときに最低限チェックしてほしいのは次のポイントです。

  • ターゲット層(10代〜20代の若者層など)が日常的に通る動線か
  • 半径500m以内の競合古着屋の数と棲み分けが成立するか
  • 平日と週末の通行量に極端な差がないか
  • 駐車場や駅からの距離は来店ハードルを上げていないか

落とし穴4:集客チャネルが「来店待ち」のまま

「お店を開けば、お客さんは来てくれるはず」。15年前ならまだ通用したかもしれませんが、いまの時代は完全にアウトです。

SNSでの情報発信なしに古着屋を成立させるのは、今や至難の業。Z世代の購買行動は完全にInstagram・TikTokに移っており、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の業種別開業ガイド「古着店」でも、SNS戦略やインフルエンサー活用の重要性が明記されています。

それでも「Instagramは苦手やから」と言って投稿を止めてしまうオーナーさんが、いまだに半数近くいる。これは本当にもったいない話です。

落とし穴5:損益分岐点を計算していない

赤字店の社長さんに「月いくら売れたら黒字なんですか?」と聞くと、即答できない方が驚くほど多いです。これが最大の問題やと私は思っています。

損益分岐点を知らないまま経営するのは、目隠しで運転するようなもの。家賃・人件費・水道光熱費・通信費・仕入れの平均原価率を入れて計算すれば、必ず「最低ラインの月商」が出ます。そこを下回ったら、そもそもビジネスとして成立してへんのです。

最低限、開業前に一度は次の式を紙に書き出してください。

  • 固定費(家賃+人件費+光熱費+通信費+減価償却)
  • 平均原価率(仕入れ÷売価の平均)
  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 原価率)

黒字化を実現するための5つの具体策

ここからは、赤字を抜け出して安定的に利益を残すための処方箋を5つお伝えします。私が実際にコンサルで使っている内容なので、明日からでも実行できるはずです。

黒字化策1:原価率と販売価格をセットで設計する

古着販売の利益率は、一般的に40〜60%と言われています。ただしこれは「仕入れに失敗していない場合」の話。仕入れ単価と販売価格を、最初からセットで設計する必要があります。

具体的には、ベール仕入れであれば「1ベール購入したら、何点が販売可能で、平均販売価格はいくらか」を事前にシミュレーションしておく。例えば100点入りベールを5万円で仕入れた場合、販売可能率を70%と仮定すると70点。1点平均販売価格2,500円なら売上見込みは17.5万円。粗利は12.5万円、原価率は約29%という計算になります。

逆に販売可能率が50%しかなければ売上は12.5万円、粗利は7.5万円、原価率は40%まで上がります。同じ仕入れ額でも全然ちゃう数字になるんです。仕入れ前にこの計算をクセにするだけで、ハズレの仕入れ判断が劇的に減ります。

黒字化策2:在庫管理を「個品単位」で徹底する

古着屋は、新品アパレルと違って同じSKUが存在しません。1点1点が独立した商品。だからこそ、個品管理ができていないお店は必ず利益が漏れます。

最低限、入荷した日・仕入れ価格・販売価格・販売日をスプレッドシートでもPOSでもいいので記録しましょう。これを2〜3ヶ月続けるだけで、

  • どのカテゴリの回転が速いか
  • どの仕入れ先からの商品が利益率が高いか
  • どの価格帯が一番動いているか

が見えてきます。データが揃えば、感覚に頼らない意思決定ができるようになる。私がコンサルしたお店で、個品管理を導入して3ヶ月で月商を1.4倍にした事例もあります。

黒字化策3:SNSで「お店の世界観」を発信する

SNS集客は、もはやオプションではなく必須インフラです。ただし、「商品写真をひたすらアップする」だけでは伸びません。フォロワーが惹かれるのは「商品」ではなく「お店の世界観や人柄」だからです。

成功している古着屋さんを観察すると、共通して次のような発信をしています。

  • スタッフのコーディネート提案(リアルな着こなし)
  • 仕入れの裏側や買い付け旅行のストーリー
  • お客さん自身がアイテムを身につけているUGC
  • ライブ配信やストーリーズでの新入荷紹介

埼玉県の人気古着屋「OLDGREEN」さんは、Instagramのリールで「1万円コーデ企画」を連載し、最大30万回再生を記録した投稿もあります。商品紹介ではなく「企画」で見せているのがポイントですね。

私自身、Instagramを軽視していた時期があって、当時のフォロワー数は500人程度でした。本気で運用を始めて1年で1.5万人まで増やしたら、ECの売上が前年比2.3倍になりました。やるかやらへんかで、ほんまに結果が変わります。

黒字化策4:オンラインと実店舗のハイブリッド運営

実店舗だけ、あるいはオンラインだけ、という形に固執する必要はありません。むしろ両輪で運営した方がリスク分散にもなり、機会損失も減らせます。

オンラインのメリットは家賃ゼロ・営業時間無制限・全国の顧客にリーチできること。実店舗のメリットはブランディング・試着体験・地域密着のロイヤル顧客づくり。両方の良いとこ取りができるのが、ハイブリッド運営の強みです。

おすすめは次の組み合わせです。

販売チャネル役割主な投資
実店舗ブランディング・体験提供・地元顧客家賃・内装・接客人件費
自社EC(BASE/Shopify等)世界観の発信・固定ファン化サイト構築・撮影機材
フリマアプリ(メルカリ等)新規顧客接点・在庫の現金化出品の手間
Instagram/TikTok認知獲得・ストーリー発信運用工数

最初から全部やる必要はありません。まず実店舗+Instagramから始めて、半年後にECを足す、というステップで十分です。

黒字化策5:古物商許可など法的手続きを丁寧に

意外と落とし穴になっているのが、法的な手続きの軽視です。古着を売買するには「古物商許可」の取得が法律で義務付けられており、無許可営業は古物営業法違反となります。

警視庁の古物商許可申請ページによれば、申請手数料は19,000円、申請窓口は主たる営業所の所在地を管轄する警察署。必要書類は申請書、略歴書、住民票の写し(本籍記載)、誓約書、身分証明書などで、申請から許可までは40〜60日程度かかります。

「そのうち取ろう」と思っていると、開業スケジュールが後ろにズレて運転資金を食いつぶす羽目になります。物件契約と並行して、許可申請も進めるのが正解です。

法的なハードルをクリアしておくと、卸業者との取引や銀行からの融資もスムーズになります。逆に「無許可で副業から始めて、後で許可を取れば大丈夫やろ」というのは絶対にやったらあかんパターン。後から取り返しがつきません。

古着屋オーナーのリアルな収支シミュレーション

「結局、古着屋ってどれくらい儲かるん?」という質問に、できるだけ数字で答えていきます。あくまで一例なので、自分の状況に合わせて読み替えてください。

個人経営・小型路面店のモデルケース

地方都市で家賃15万円の小型路面店を借り、オーナー1人+アルバイト1人で運営する場合のシミュレーションです。

項目金額(月間)備考
売上高120万円客単価6,000円×日10名×営業25日
仕入れ原価42万円原価率35%
粗利78万円売上−仕入れ
家賃15万円地方都市の小型店想定
人件費(アルバイト)12万円時給1,100円×4時間×25日
水道光熱費2万円
通信費・サブスク1万5,000円EC・POS含む
消耗品・梱包資材1万5,000円
広告宣伝費3万円SNS広告中心
オーナー利益43万円年収換算516万円

このモデルだと、年収500万円ラインが見えてきます。サラリーマン時代より少し増える、という方が多いゾーンです。

ただし、これは「黒字運営が回り始めてから」の数字です。開業初年度は集客が安定するまでに時間がかかるため、月のオーナー利益が10万円を切ることも普通にあります。だからこそ、運転資金として最低でも生活費+固定費の6ヶ月分を確保しておくことが鉄則です。

黒字化までに必要な期間の目安

私の経験則ですが、しっかりと準備して開業した古着屋さんが「月次で黒字を継続できる状態」になるまでには、平均で6〜12ヶ月かかります。早い人で3ヶ月、遅い人で1年半。ここを耐えるだけのキャッシュがあるかが、生き残るかどうかの分かれ目です。

逆に言うと、半年で「もう無理や」と諦めてしまう人は、ビジネスの立ち上がり曲線を知らないまま参入してしまった可能性が高い。古着屋に限らず、どんな小売業でも初年度は赤字スタートが当たり前です。

開業前に絶対やってほしいのが、次の3つです。

  • 家計と事業のキャッシュフローを別管理にする
  • 最低6ヶ月分の生活費+固定費を別口座に確保する
  • 「いつまでに黒字化できなかったら撤退する」という撤退ラインを設定する

撤退ラインを決めておくのは、ネガティブな話やなくて「無謀な戦いを避けるための保険」です。ゼロを切る前に立て直せれば、再起のチャンスは何度でもあります。

まとめ

「古着屋は儲からない」という言葉は、市場全体を見れば正確ではありません。日本の古着・ファッションリユース市場は2024年で1兆2,800億円規模に成長しており、追い風の中にあります。問題は、市場の成長を自分の店の売上に変換できるかどうか。そこが赤字オーナーと黒字オーナーを分けるポイントです。

赤字に陥るオーナーさんに共通するのは、安さで仕入れを判断してしまう、在庫回転率を見ていない、立地と商圏を読み違えている、SNS発信が止まっている、損益分岐点を計算していない、この5つです。逆に黒字を実現している店は、原価率を意識した価格設計、個品単位の在庫管理、世界観を発信するSNS運用、ハイブリッド販売、そして法的手続きの丁寧さ、という5つの基本を徹底しています。

正直に言うと、古着ビジネスは決して楽な商売やありません。私自身、何度も失敗して、そのたびに立ち上がってきました。でも、正しい方向で努力を積み重ねれば、必ず結果はついてきます。市場が伸びている今は、参入のチャンスが広がっている時代でもあります。

これから開業を検討する方も、いま赤字に苦しんでいる方も、「自分の店で何が起きているのか」を数字で把握するところから始めてみてください。数字が見えれば、次の一手は必ず見つかります。皆さんの挑戦を、心から応援しています。一緒に頑張りましょう。