古着ビジネスの在庫管理システム:回転率を2倍にした管理術

「ええ商品仕入れて、売上もそこそこ立ってる。せやのに、なんでか手元にお金が残らへん…」

古着ビジネスをやってると、そんな悩みにぶつかること、ありまへんか?店のバックヤードや部屋の隅に、売れ残った服が山積みになって頭を抱えてる人も多いんちゃいますか。

実はそれ、全部「在庫管理」に問題があるんですわ。ワシも昔は売上ばっかり追いかけて、在庫の山で黒字倒産しかけた苦い経験があります。今回は、そんなワシが失敗から学んだ、店の血液とも言えるお金の流れを良くして、在庫回転率を2倍にした「在庫管理術」を、余すところなくお伝えします。

難しいシステムの話やない、明日からできる実践的な話しかしませんから、ぜひ最後までついてきてください!

なんで在庫管理が古着ビジネスの”心臓部”なんか?ワシの失敗談から話しますわ

売上は順調やのに、黒字倒産しかけたあの日

2010年のリーマンショック。あの時のことは今でも鮮明に覚えてます。当時、大阪で2店舗を運営してて、月商1,500万円ほどの売上を上げてました。「順調やな」って思ってたんですが、ショックの影響で売上が一気に半分の750万円まで落ち込んだんです。

でも、本当の地獄はそこからでした。売上が下がったのに、なぜか支払いに回すお金がない。帳簿を見ると確かに黒字なんですが、銀行の通帳残高は月末の支払いに200万円も足りない状況。「なんでや?」って本気で頭を抱えました。

原因は明らかでした。店の奥やバックヤードに、3,000万円分もの在庫が山積みになってたんです。しかも、その70%は3ヶ月以上売れ残ってる「死に筋商品」。ワシはそれまで、売上の数字ばっかり追いかけて、在庫のことなんてどんぶり勘定でやってました。

「売れてる商品の影で、大量の死に筋在庫が店の体力を奪ってた」んです。帳簿上は黒字やのに、支払いに回す現金がない。ホンマに地獄やった。あの時、銀行に頭を下げて借り入れをお願いしたときの屈辱感は、今でも忘れられません。

「在庫は資産やない、現金化して初めて価値になる」と気づいた瞬間

さらに追い打ちをかけたのが、2013年のスタッフ大量離職事件です。当時3店舗まで拡大してたんですが、労働条件の問題でスタッフが一斉に辞めてしまい、一時期ワシ一人で3店舗を回すことになりました。

毎日朝から晩まで店を駆け回って、気がついたら物理的に在庫の山に埋もれてる状況。どの店にどの商品があるかも分からへん。お客さんに「あの服、まだありますか?」って聞かれても、「ちょっと探してみますわ」って言いながら、結局見つからずに売り逃しの連続。

その時に痛感したんです。「目の前の服は、ただのモノ。お客様に届いて、お金に変わって初めて商売になるんや」って。在庫は資産やない、現金化して初めて価値になる。この当たり前のことに、ワシは15年間この業界にいて、やっと気づいたんです。

在庫を「コスト」として捉える視点の転換。これが、ワシの経営改善の第一歩でした。それまでは「いい商品を仕入れれば売れる」って思ってたけど、実際は「いい商品を適切に管理して、適切なタイミングで現金化する」ことが何より大事やったんです。

在庫回転率を2倍にする!佐藤式「3ステップ在庫管理術」

失敗から学んだワシが、2014年から本格的に取り組んだ在庫管理システム。これを導入してから、在庫回転率が年2.1回から4.2回へと2倍になりました。デッドストック率も35%から12%まで改善。何より、現金流が安定して、夜も安心して眠れるようになったんです。

その方法を、誰でもできる3つのステップで説明しますわ。

佐藤式「3ステップ在庫管理術」

ステップ1:まずは全部出す!Excelで全在庫を「見える化」するんや

「見て見ぬフリが一番アカン」これがワシの持論です。まずは、店にある全ての在庫をリスト化することから始めましょう。「そんなん面倒くさい」って思うかもしれませんが、これをやらんと何も始まりません。

管理すべき項目はこれだけ:

  1. 管理番号:「202508-001」のように「仕入れ年月-連番」で管理
  2. 仕入れ日:いつ仕入れたか
  3. 仕入れ値:原価はいくらか
  4. ブランド:どこのブランドか
  5. カテゴリ:トップス、ボトムス、アウターなど
  6. 販売価格:いくらで売るか
  7. 在庫期間:仕入れてから何日経ったか

ExcelやGoogleスプレッドシートで十分です。高機能なシステムなんて最初は要りません。大事なのは「続けること」。ワシも最初はノートに手書きから始めました。

一点モノが多い古着の場合、管理番号の付け方が特に重要です。「202508-001」という番号を見ただけで、「2025年8月に仕入れた1番目の商品」って分かるようにしておく。後から分析するときに、めちゃくちゃ便利になりますよ。

ステップ2:「ABC分析」で”稼ぎ頭”と”お荷物”を仕分けるんやで

全在庫をリスト化したら、次は「ABC分析」で商品を3つのグループに分けます。これは中小企業診断士の資格を取るときに学んだ手法ですが、古着ビジネスにも抜群に効果があります。

Aランク(稼ぎ頭):売上の上位70%を占める優良在庫

  • 売れ筋商品、人気ブランド、定番アイテム
  • 絶対に切らしたらアカン商品群
  • 追加仕入れを積極的に検討する

Bランク(普通):売上の中位20%を占める在庫

  • そこそこ売れる商品
  • 現状維持か、Aランクに育てる施策を考える
  • 陳列場所や見せ方を工夫する余地あり

Cランク(お荷物):売上の下位10%しか占めない不良在庫

  • 3ヶ月以上売れてない商品
  • これがキャッシュフローを圧迫する元凶
  • 早急な対策が必要

この分析をやってみると、驚くことが分かります。売上の70%は、実は全体の20%程度の商品で作られてるんです。逆に言うと、残りの80%の商品は、売上の30%しか貢献してない。つまり、大部分の在庫が「お荷物」になってる可能性が高いんです。

ワシの店でも、最初にこの分析をやったときは愕然としました。3,000万円の在庫のうち、本当に稼いでくれてるのは600万円分だけ。残りの2,400万円は、ただ場所を取ってるだけの「コスト」やったんです。

ステップ3:「鮮度管理」でデッドストックを絶対に作らへん仕組み

ABC分析でCランクに分類された商品は、すぐに対策を打ちます。ワシが導入したのは「3ヶ月ルール」。仕入れから3ヶ月経った商品は、自動的に何らかのアクションを取るルールです。

3ヶ月ルールの具体的なアクション:

1.まずは見せ方を変える

  • 店頭のゴールデンゾーン(最も目立つ場所)に移動
  • コーディネートで提案する
  • POPを付けて商品の魅力をアピール

2.それでもダメならセール対象

  • 20%オフから始めて、段階的に値下げ
  • セット販売で他の商品と組み合わせる
  • 福袋に入れて処分

3.最終手段は損切り

  • 専門業者への売却
  • 寄付(税務上のメリットもあり)
  • 廃棄(環境のことを考えて最後の最後)

「もったいない」って気持ちは分かります。ワシも最初は「いつか売れるやろう」って思ってました。でも、3ヶ月売れなかった商品が6ヶ月後に売れる確率は、統計的に5%以下なんです。それより、その場所に新しい商品を置いた方が、よっぽど売上に貢献します。

現金化を最優先に考える。これが在庫管理の鉄則です。原価割れでも、現金に変えることで次の仕入れ資金になる。そうやって在庫を回転させることで、結果的に利益も増えるんです。

これだけは押さえとけ!在庫管理で失敗せえへんための注意点とコツ

実際にやってみて分かったんですが、在庫管理で失敗する人には共通点があります。ワシ自身も通った道やから、同じ失敗をせんように、特に大事なポイントを3つお伝えします。

完璧なシステムを目指したらアカン。まずは手書きからでもええ

よくある失敗が、最初から高機能なPOSシステムや在庫管理ソフトを導入しようとすること。確かに便利やけど、使いこなせずに挫折する人がめちゃくちゃ多いんです。

ワシも最初は「ちゃんとしたシステムを入れなアカン」って思って、50万円もするソフトを買いました。でも、設定が複雑すぎて、結局使わずじまい。お金をドブに捨てたようなもんでした。

大事なのは「続けること」です。手書きのノートでも、ExcelでもGoogleスプレッドシートでも、何でもええんです。まずは今日から、目の前にある在庫を一つずつリストアップしていく。その積み重ねが、後々大きな差になります。

システムは後からいくらでもアップグレードできます。でも、データがなかったら何も始まりません。完璧を求めずに、まずは「やってみる」ことから始めてください。

数字だけ見るな、必ず「現物」を自分の目で確認せえ

データ上の在庫と実際の在庫が合わないことは、日常茶飯事です。特に古着の場合、商品の状態が変わることがあります。シミが付いたり、ほつれが出たり、色あせしたり。データ上は「良品」でも、実際は「難あり品」になってることもあります。

ワシは月に1回、必ず全店舗の棚卸しをやります。その時に、商品の状態も一緒にチェック。「あ、この服、シミができてるやん」「このボタン、取れかけてるな」そんな発見が必ずあります。

状態が悪くなった商品は、すぐに価格を下げるか、リペアするか、処分するかを決めます。放置してたら、どんどん状態が悪くなって、最終的には売り物にならなくなります。

定期的な現物確認は、在庫管理の基本中の基本。数字だけ見てても、本当の状況は分かりません。自分の足で歩いて、自分の目で確認する。これを怠ったらアカンです。

スタッフがおるなら、在庫情報は「共通言語」や

ワシがスタッフの大量離職で痛い目に遭ったのは、在庫情報を共有してなかったからです。「この商品はどこにある?」「いつ仕入れた?」「いくらで売る?」そんな基本的な情報が、ワシの頭の中にしかなかった。

スタッフがいる場合は、在庫管理のルールを全員で共有することが絶対に必要です。商品の場所、価格設定の基準、セール対象の判断基準。これらを「共通言語」として、誰が見ても分かるようにしておく。

特に大事なのは、商品の状態変化を報告するルール。「この服、お客さんが試着したときにボタンが取れました」「この商品、日焼けで色が変わってます」そんな情報を、すぐに共有できる仕組みを作っておく。

情報共有がうまくいってる店は、スタッフ一人ひとりが「経営者目線」で在庫を見てくれるようになります。「この商品、もう3ヶ月売れてないから、セールに出しませんか?」そんな提案をしてくれるスタッフがいると、本当に心強いです。

よくある質問(FAQ)

ワシのところには、全国から古着ビジネスの相談が寄せられます。その中でも、在庫管理について特によく聞かれる質問をまとめました。皆さんも同じような悩みを持ってはりませんか?

Q: 個人でやってるんですが、どんなツールを使えばいいですか?

A: 最初はExcelやGoogleスプレッドシートで十分やで。無料で使えるし、さっき説明した「見える化」と「ABC分析」もできる。

在庫が200点超えてきて、発送作業が大変になってきたら、連番シールを貼って棚で管理する方法もおすすめや。100円ショップで売ってるシールに「001」「002」って番号を書いて、商品に貼る。Excelの管理番号と連動させれば、「あの商品どこやっけ?」ってときにすぐ見つかる。

まずはコストをかけずに始めるのが鉄則やで。売上が安定してきてから、本格的なシステムを検討すればええんです。

Q: 在庫回転率の計算方法がよく分かりません…

A: 難しく考えんでええよ。簡単に言うと「一定期間に在庫が何回入れ替わったか」を示す数字や。

計算式は色々あるけど、まずは「期間中の売上点数 ÷ 平均在庫点数」でざっくり把握すればOK。例えば、1ヶ月で100点売れて、平均在庫が200点やったら、月の回転率は0.5回。年間やと6回転ってことになる。

この数字が上がれば、お金の流れが良くなってる証拠やと思っといて。ワシの店では、年4回転を目標にしてます。業界平均が2〜3回転やから、それより上を目指してる。

Q: どうしても売れ残った服(デッドストック)はどうしたらいいですか?

A: 気持ちは分かるけど、ずっと持ってても家賃を食うだけや。

最終手段として、こんな方法があります:

  1. 福袋に入れる:年末年始や夏のセールで、他の商品と一緒に詰め合わせ
  2. リメイクする:裾上げやサイズ直しで、別の商品として再生
  3. フリマアプリで原価以下で売る:メルカリやヤフオクで、とにかく現金化
  4. 法人向けの買取業者にまとめて売る:一括処分で手間を省く

廃棄は最後の最後。環境のためにも、誰かに使ってもらう道をできるだけ探したってほしい。ワシの経験では、原価の30%でも回収できれば御の字や。それで得た現金で、新しい商品を仕入れる方がよっぽど建設的やで。

Q: セールをやりすぎると、ブランド価値が下がりませんか?

A: ええ質問やね。確かに、やみくもなセールは危険や。

だからこそ「仕入れて3ヶ月経ったもの」みたいにルールを決めるんが大事。お客さんにも「この店は定期的に入れ替わるから面白い」と思ってもらえる。ダラダラと古い商品を置き続ける方が、よっぽど店の価値を下げてしまうで。

ワシの店では「フレッシュセール」って名前で、毎月第3土曜日にセールをやってます。「新しい商品を入れるために、古い商品をお得に提供」って説明すれば、お客さんも納得してくれる。

大事なのは、セールの理由を明確にすること。「在庫処分」やなくて「新商品入荷のため」って言い方を変えるだけで、印象がガラッと変わりますよ。

Q: オンラインと実店舗、両方やってる場合の在庫管理のコツは?

A: これはホンマに難しい問題やな。一番アカンのは、同じ商品が両方で売れてしまうこと。

これを防ぐには、POSシステムみたいな一元管理できる仕組みが理想やけど、コストもかかる。小規模でやるなら、例えば「オンライン専門在庫」と「店舗専門在庫」で物理的に分けてしまうのも一つの手やで。

ワシの店では、人気商品は店舗優先、ニッチな商品はオンライン優先って使い分けてます。店舗では実際に手に取って確認したい商品、オンラインでは写真映えする商品って感じで。

どっちにしても、在庫の所在を明確にしておくことが大事。「この商品は今どこにある?」って質問に、すぐ答えられるようにしておかなアカンです。

まとめ

在庫管理っちゅうのは、正直、地味で面倒な作業かもしれん。けどな、これをコツコツやるかやらんかで、古着ビジネスが成功するかどうかが決まると言っても過言やない。

今日話したことは、ワシが何百万も損して、眠れない夜を過ごして、やっとたどり着いた答えや。派手なテクニックやないけど、確実に店の体力は強くなる。

もう一度、3つのステップをおさらいしておきますわ

  1. 全在庫の見える化:Excelでもノートでもええから、まずは全部リストアップ
  2. ABC分析で仕分け:稼ぎ頭とお荷物を明確に区別する
  3. 3ヶ月ルールで鮮度管理:古い在庫は積極的に現金化

そして忘れたらアカンのは、完璧を求めすぎないこと。現物確認を怠らないこと。スタッフがいるなら情報共有すること。この3つの注意点も、必ず頭に入れといてください。

ワシが指導した500人以上の起業家の中で、3年後も生き残ってる85%の人たちには、一つの共通点があります。それは「基本を大事にして、コツコツ続けてる」ってことです。

在庫管理も同じ。一日や二日で劇的に変わるもんやない。でも、毎日少しずつでも続けてたら、必ず結果は出ます。ワシの店の在庫回転率が2倍になったのも、一朝一夕やない。毎日の積み重ねの結果なんです。

この記事を読んで「やってみよう」と思ってくれたなら、まずは目の前にある在庫を一つ、Excelに打ち込むところから始めてみてほしい。その一歩が、あなたのビジネスを大きく変えるはずや。

古着ビジネスは確かに厳しい業界やけど、正しい在庫管理ができれば、必ず道は開けます。ワシも最初は素人やった。失敗もいっぱいした。でも、諦めずに続けてきたから今がある。

皆さんも一緒に頑張りましょう!困ったことがあったら、いつでも相談してください。古着ビジネスで成功する仲間が一人でも増えることを、心から願ってます。

株式会社ヴィンテージ・サクセス 代表取締役 佐藤健一